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アルプス登攀記 [ヨーロッパアルプス]

マッターホルンはスイスとイタリアの国境に位置する、標高4478mの山。ピラミッドのようなその四角錐の山は、理想の山と称されるほど美しい形です。雪もつかないほど切り立ったその岩山は難攻不落の山として、長い間、多くの登山家の挑戦を拒み続けていました。地元の人には悪魔の住む山として畏れられてさえいたのです。

そんなマッターホルンの初登頂は、1865年7月14日、英国人エドワード・ウィンパーら7名によるものでした。しかし、無事に山から下りれたのは3人。登山では険しい岩山を登るとき、ロープでお互いの体を結びあいます。万が一、誰かが足を踏み外したら、他の人が支えるのです。この時も7人は数珠つなぎに結ばれていました。登山は登りよりも下りが怖いもの。運悪く一人が足を滑らせて、支えるはずのロープが切れて4人は1200m下の氷河に墜落してしまったのです。

情熱に燃えた若きウィンパー、何年もアルプスに通い続け、7度の失敗を経てもあきらめず、やっと手に入れた栄光が、一瞬にして悲劇に変わってしまったのです。画家でもあるウィンパーの描写は淡々としたもの、ありのままの事実を書き連ねています(挿絵もウィンパーの手によるもの)。いかに一緒に登る仲間を集めるか、チームワークやライバル、そんな人間模様も見どころです。


アルプス登攀記〈上〉 (岩波文庫)
アルプス登攀記〈下〉 (岩波文庫)

アルプス登攀記〈上〉 (岩波文庫)


アルプス登攀記〈下〉 (岩波文庫)
  • 作者: エドワード ウィンパー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1966/01
  • メディア: 文庫

スイスのツェルマットの街から見た朝焼けの「Matterhorn マッターホルン」
フランス語では「Mont Cervin モン セルバン」、
イタリア語では「Cervino チェルヴィーノ」といくつか呼び名があります。


シュバルツゼー(「黒い湖」の意)からのマッターホルン、湖畔には白い教会があります。
「マット」とは草地のこと「ホルン」は角、まさに草地にそびえる角ですね。
右面が北壁、左面が東壁、その間の尾根(ヘルンリ稜)をウィンパーらは登りました。


*******  追記  *******
7月12日山形県蔵王で子供会でハイキングしていた保育園児が滑落、それを救助しようとした男性も滑落して2人とも死亡するという胸の痛む事故がありました。残念な限りです。山に登る上で安全を確保することは常に意識していなければなりません。
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hir

アルプス登攀記読みました
なかなか、紆余曲折、登山家の苦労がわかるお話でした
登山技術って、進歩、進化してるんだなって思いました

山での安全確保、、、
私も、子供と楽しんでいるので他人事ではありません
by hir (2009-07-13 18:11) 

mouse1948

こんばんわ。
マッターホルンは登ることは叶いませんが、以前もお話しましたように、かなり昔の2月にツェルマットに泊まってマッターホルン周辺及び直下をスキーしてきました。
夏もいいでしょうね。
by mouse1948 (2009-07-13 19:04) 

リュカ

ウィンパー自身の挿絵があるのですね。
どんな絵なのか見てみたいです。
ツェルマットの街から見た朝焼けのマッターホルンの写真
凄くキレイです。
by リュカ (2009-07-13 20:10) 

mikanchan

最後の写真はハイジに出てくる山を実写にしたような感じですね。
ヤギの鳴き声が聞こえてきそうです^^ 「旦那とか・・・」
ハイジの本(MOEじゃなくて物語)を図書館で借りたのですが、間違えて中学生が読むタイプの本を借りてしまいました。
書庫から出してきてもらったので私のオーダーミスです(笑)
書店でも取り寄せになってるので、ちゃんと調べてから買わないと^^
by mikanchan (2009-07-13 20:14) 

montblanc

☆hirさん
山岳文学の古典とも言える本です。
当時の装備でよくぞ登りましたって感じです。
GOREのレインスーツやクライミングシューズなんてありませんからね。

事故を未然に防ぐ努力は欠かせません。
特に子どもと一緒のときは大人が守ってあげなければなりません。

☆mouse1948さん
スケールの大きい氷河スキーも素晴らしいですね。
夏はエーデルワイスをはじめ、色とりどりのお花畑が待っています!

☆リュカさん
今のように写真が普及する前、
アルプスの素晴らしさは多くの絵画によって人々に伝えられました。
ウィンパーの絵は緻密なスケッチが多いです。
登山者や山の様子をとてもよく表しています。

☆mikanchanさん
もちろん!やぎたちに会うこともできますよ(^^)メェ~♪
ハイジ、普通の文庫本だと角川文庫が入手可能ですね。
(この訳は言葉遣いがとても丁寧な感じ。挿絵はありません。)
岩波文庫では「アルプスの山の娘」としてリクエスト復刊されてます。
(こちらは野上弥生子の訳でレトロな感じ「ハイヂ」だし・・・)
児童書でも福音館文庫のものは矢川澄子訳で個人的には好きです。
by montblanc (2009-07-13 23:56) 

GT-FOUR

ドーバー海峡横断部が海峡横断に成功し、次がマッターホルン登頂部!TV企画の素人が本当にできるのか?あえなく撤退。そして八ヶ岳の赤岳登山の企画に変更!登れた人もいたんだっけかな?その番組見た我々は赤岳を計画。まさに下山途中に滑落直後の倒れている方に遭遇。上を見れば岩場にリュックや靴や帽子が散乱。シーズン中で人も多く、お仲間もいらしたので、邪魔にならぬようその場を離れ、遠くからヘリの空中収容のトライを祈る思いで見守りました。数回チャレンジ後、収容に成功した時にはホッとしましたが、翌日の新聞記事にお亡くなりになったとありました。
記事に関係なく、記事のキーワードにまつわる私のエピソードをコメするのはどうなのでしょうか?(*´Д`)=3 ハァ~!
もしもで、いいのですが私の過去記事↓こんなことに私は興味を持っています!
http://symbiont-c-a-s-k.blog.so-net.ne.jp/2009-06-15
何か教えていただけたら幸いですm(_ _)m
また、お気軽ブログライフの道を外れてます!ごめんなさい!スルーしてください(>_<)!
by GT-FOUR (2009-07-14 00:10) 

montblanc

☆GT-FOURさん
アウトドア活動は自然を相手にすること、文明化してしまった現代人、
安全に楽しむためには初心者、ベテランを問わず、
アクティビティの経験に応じた危機管理が必要なのかもしれません。

リンクは「低体温症」に関する記事ですね。
夏でも凍死するという事実、もっと一般に広まらねばならない知識です。
by montblanc (2009-07-14 06:25) 

GT-FOUR

お手数をおかけしてしまい、すみませんでした。
経験に応じた危機管理、耳が痛いです。
どこまでがセーフティーゾーンなのか?自然の中で、
考えてばかりいます。
低体温症についてのご説明、お話、本当にありがとう
ございました。やはり、私の知識は浅くもっと勉強しないと
いけないと分かりました。
繰り返しになりますが、ありがとうございました。
by GT-FOUR (2009-07-14 13:44) 

エリザベート

姿の綺麗な山には眺めているだけでなくやはり登りたくなるのが人情でしょうか?? 山での死・・・というと未だに遺体の見つからない植村直己さんを思い出します。どれだけ装備しても完璧というのはないのでしょうね。。
蔵王の事故は胸が痛みますね。・・でも、防止柵をつけるのも・・・軽い気持ちではダメと教える方が正しいのでは・・と思いました。
by エリザベート (2009-07-14 15:05) 

ホシ

すごい形だもんね。確かに難しそう。
岩波でこんな本があったんだー。小さいのもいいな。
電車にもよさそうだー。
蔵王でそんなことがあったんだね…
保育園でハイキングだから、そうキビシくなさそうと
思われてるとこなんだろうか?
by ホシ (2009-07-14 21:55) 

ひろP

イタリア側(チェルビーノ)では何度かスキーや観光に行ったことがあります。
たしか、富士山より高いところまで、ゴンドラで行けちゃうんですよね…。
スケールの大きさはすごいです。
by ひろP (2009-07-14 22:29) 

montblanc

☆GT-FOURさん
とんでもありません。少しでもお役に立てたら幸いです。
安全対策はしすぎるということはないようです。

☆エリザベートさん
もちろん眺めてよし、っていうのもありですよ(^^)
植村さんのことになると何も言えません。

失ってしまった命は戻ってきません。
残された家族や一緒にハイキングにいった方々の悲しみも計りしれません。。
単に柵をつけただけは解決しないでしょう。
問題点を整理して同じ事故を繰り返さないようにしなければなりません。

☆ホシさん
マッターホルンは、ずっと岩登りの連続で気が抜けません。
写真を撮ってる余裕はないかも?
周辺のいろんな湖に映る逆さマッターホルンが撮影では人気です☆

子供会らしく年齢の幅もあり、大人も同伴していたみたいです。
吊橋がかかるほど深い沢、渡りきった所のその脇から50m転落。
蔵王は車で頂上までいけてしまうところもあるのですが、
このコースはハイキングというより登山です。

☆ひろPさん
ツエルマットからはロープウェイを乗り継いで
クラインマッターホルン(3818m)に行けます!
イタリアとスイス間、パスポート必携のスキーもありますね。
アルプスの山々に囲まれて豪快なスキーは素晴らしいです♪
by montblanc (2009-07-14 23:59) 

montblanc

7月14日、なにかひっかかっていたのですが、
フランスの革命記念日だったのですね。
今から220年前の1789年、バスティーユが襲撃されたのです。

マッターホルン初登頂が1865年7月14日、日本では慶応元年、
幕末で新撰組が活躍していたころです。
by montblanc (2009-07-15 00:07) 

べっ、べつに

何でもする。舐めてあげるし。入れてあげる。(ノ゚Д゚)ノシ☆ http://ktjg.net/index.html
by べっ、べつに (2011-11-21 21:22) 

グッチ 通販

今日は~^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。
by グッチ 通販 (2012-11-08 03:10) 

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