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霧の子孫たち [山岳小説ほか]

「霧ヶ峰」といってもエアコンのそれではありません。長野県の中央に位置する高原で、なだらかな草原にさわやかな風が吹いています。これからは太陽の光をたっぷり浴びたニッコウキスゲが一面に広がり、見ごろになります。

この本も前回と同じ、新田次郎氏の作品です。霧ヶ峰の麓は氏の故郷でもあります。レンゲツツジ、ニッコウキスゲ、マツムシソウと次々にバトンタッチして登山道の傍らに咲く花の様子などが目に浮かぶようで、故郷の自然を愛する気持ちが伝わってきます。その真ん中を観光のために有料道路建設が計画されたときの事実に基づくお話です。

当初計画されていたルート上の八島ヶ原周辺はは高層湿原としてだけでなく、古代遺跡としても価値のある場所です。地元の有志が立ち上がり保護運動をくり広げます。ルート変更こそしたものの結局道路(現在のビーナスライン)は開通します。日本全国で同様の観光開発が行われました。一本の道路ができることによって、普段踏み入れることのできない場所に手軽にアクセスできるようになった半面、失ったものも少なくありません。

「自然保護」という言葉を聞くと気が重くなってしまうことの方が多いです。痛めつけられた植物、ゴミの問題、トイレの問題、山を歩いているときれいな景色ばかりではありません。では、一体どうしたらいいのでしょう?まずは山に入る一人一人が心から自然が好きになることかなぁ・・・なんてちょとのん気過ぎるでしょうか。

霧の子孫たち (文春文庫)

霧の子孫たち (文春文庫)

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/09
  • メディア: 文庫



nice!(27)  コメント(4) 
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コメント 4

雉虎堂

環境問題の多くは自分も加害者なのに
自分ひとりじゃどうにもできないことが多くて
連帯というのが大切なんでしょうけれども
世代的に市民活動みたいなことに
どうも腰が引けてしまうんです
状況は各方面で待ったなしなんですけどねえ(-。-)
by 雉虎堂 (2010-07-24 23:41) 

montblanc

これからはネットとか緩いつながりで連帯できる可能性もあるのかなぁ~なんて。日本の場合、ウチはきれいにするけど、ソトは構わないなんていう風潮が根強いですね。足元にゴミが落ちていたら拾えるか?都会では見てみぬふりをしてしまうことが多いです。地球が私の家みたいに思えるようになるには、まだまだ先のようです。
by montblanc (2010-07-26 08:25) 

mint_tea

新田次郎さんの本はほとんど全部読んでいて、この本も読んだはずなのに
内容すっかり忘れています……(>_<)

by mint_tea (2010-07-26 20:44) 

montblanc

私は初めて読みました^^文春文庫から新装出版らしいです。
行政とのやりとりとかちょっと政治色がある部分は消化不良でした^^;
新田さんの本は淡々とした文章の中に山の美しさや
登山者が際立つような感じを受けます^^
by montblanc (2010-07-26 22:47) 

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