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単独行者 [山岳小説ほか]

加藤文太郎は、昭和初期の登山家で、彼の登山への情熱たるやとどまることを知らず、一日15時間100kmもの道のりを歩いてしまうほど。健脚を越えて剛脚の持ち主です。誰も彼についていくことができなかったからなんて話もありますが、彼の登山スタイルは単独行がメインでした。特に冬山に魅せられ、槍ヶ岳をはじめ、厳冬期の日本アルプスの峰々に足跡を残しました。

彼自身の著作に『単独行』があります(青空文庫でも読めます)。彼をモデルにした新田次郎氏の小説『孤高の人』も有名です。私も少なからず影響を受けて、地図上の自分が歩いた道を赤鉛筆でなぞったり、最寄りの駅から登山口まで歩いてみたり、昼夜歩き続けたりしました。

この本を読む中で、どこまでが事実で、どこまでがフィクションなのか非常に戸惑いました。登山者の心理や山の描写など非常に巧みに表現されているのですが、やはり真実は本人のみしか知り得ないことです。前述の『単独行』も合わせて読むことをおすすめします。昭和11年1月、加藤文太郎は槍ヶ岳から北に延びる北鎌尾根でパートナーと共に命を落としています。


単独行者(アラインゲンガー)新・加藤文太郎伝

単独行者(アラインゲンガー)新・加藤文太郎伝

  • 作者: 谷 甲州
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2010/09/16
  • メディア: 単行本


☆★☆おまけの写真☆★☆


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霧の子孫たち [山岳小説ほか]

「霧ヶ峰」といってもエアコンのそれではありません。長野県の中央に位置する高原で、なだらかな草原にさわやかな風が吹いています。これからは太陽の光をたっぷり浴びたニッコウキスゲが一面に広がり、見ごろになります。

この本も前回と同じ、新田次郎氏の作品です。霧ヶ峰の麓は氏の故郷でもあります。レンゲツツジ、ニッコウキスゲ、マツムシソウと次々にバトンタッチして登山道の傍らに咲く花の様子などが目に浮かぶようで、故郷の自然を愛する気持ちが伝わってきます。その真ん中を観光のために有料道路建設が計画されたときの事実に基づくお話です。

当初計画されていたルート上の八島ヶ原周辺はは高層湿原としてだけでなく、古代遺跡としても価値のある場所です。地元の有志が立ち上がり保護運動をくり広げます。ルート変更こそしたものの結局道路(現在のビーナスライン)は開通します。日本全国で同様の観光開発が行われました。一本の道路ができることによって、普段踏み入れることのできない場所に手軽にアクセスできるようになった半面、失ったものも少なくありません。

「自然保護」という言葉を聞くと気が重くなってしまうことの方が多いです。痛めつけられた植物、ゴミの問題、トイレの問題、山を歩いているときれいな景色ばかりではありません。では、一体どうしたらいいのでしょう?まずは山に入る一人一人が心から自然が好きになることかなぁ・・・なんてちょとのん気過ぎるでしょうか。

霧の子孫たち (文春文庫)

霧の子孫たち (文春文庫)

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/09
  • メディア: 文庫



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八甲田山死の彷徨 [山岳小説ほか]

梅雨が明けました!天気も安定して登山にも絶好のチャンスです!しかし、それにしても暑いです。熱中症には要注意、帽子をかぶって、こまめな水分補給と休息が必要です。

真夏に真冬の話とは何とも季節外れなのですが、この本は1902年(明治35年)1月、青森の八甲田山で行われた雪中行軍の遭難の史実にもとづいて書かれた小説です。猛吹雪と寒波に閉じ込められ、あるものは立ったまま凍りつき、あるものは精神錯乱し、199名の犠牲者を出すという世界山岳史上類を見ない悲劇です。のべ1万人の救助活動で助かった命はたったの11人でした。一方、同じ時期に逆コースで挑んだ別の隊38名は苦難の末に全員が生還しています。

2つの隊の明暗を分けたものは何だったのか?100年以上も前の出来事ですが、現代の登山者にも数多くの教訓がつきつけられる思いです。夏には無関係と思われる凍死。長い時間、雨や汗で濡れた体で風にあたっていると体温が奪われ、低体温症に陥る危険があります。初期症状としては、震えが止まらなくなるくらいですが、やがて意識が混濁し、死に至る危険さえあります。

下着を濡れても保温性のある素材のものにしたり、登山用の雨具を用意したり、天気やコースを調べたり、山へ向かうにはやるべきことがたくさんありそうです。心の準備がしっかりできていれば必要な準備や判断ができるはずです。万全の備えで夏山を楽しみたいものです。

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1978/01
  • メディア: 文庫


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